「ほしい!」を見つける ずっと愛せる東北。vol.3-2

【2nd day】自然と共存する樺細工の魅力
自然と共生するものづくりの舞台裏
ものづくりにかける想い

非常に丈夫でしなやか、艶やかな深い色合いと質感が魅力的な樺細工ですが、初めからこの色艶で存在しているわけではありません。これらの表情は職人の技があってこそ。研磨によってより深みのある光沢を引き出したり、匠の技で処理を施すことで多彩な表現が可能になります。また、生き物である木材を使用するため、どれをとっても同じものはなく全てが1点ものです。
1970年創業の冨岡商店は、1976年に秋田県で初めて国指定伝統的工芸品に登録された樺細工の製造元として、樺細工の魅力と樺細工のある暮らしの豊かさを国内にとどまらず世界に発信しています。

「モノ語り性・デザイン性・機能性・耐久性のある独創的な作品である商品を通じて、使い捨てではない“使い続ける豊かさ”を伝えたい」と冨岡さん。秋田県大館曲げわっぱや岐阜県の美濃焼など様々な異素材コラボも取り入れながら、樺細工の新しい可能性を探求しています。「生活シーンを思い浮かべながら、心が動くもの、思わずクスッとするようなものを作りたいですね」と話します。冨岡商店ならではの、伝統的工芸品×洗練されたデザインや機能性を併せ持つ新商品が次々と生まれる理由は、そういった想いが中心となっていました。

サスティナブルな関係
自然と共に歩むものづくり

樺細工のものづくりは自然との関係性作りから始まります。「冨岡商店では主にパルプ原料に使用される雑木林中の山桜から樹皮を採取しています。健全な山林の保全のためには適切な伐採による“更新”が必要なため、林業とも密接に関わりながらものづくりを行なっています」と冨岡さん。サスティナブルでエコロジー、エシカルに寄り添った自然と共にあるものづくりが軸になっています。

「樺細工に使用する樹皮は、木を切り倒してしまうと樹皮がしまってしまい剥けてきません。切り倒す前に木登りをして切り込みを入れて採取するんです」(上写真)は樹皮を採取した際のサンプルです。左側の木の中央の色が薄い部分が樹皮採取後の姿で、採取後の幹を見ると樺細工でおなじみの模様が浮き出ているのが分かります。「梅雨時期をはさむと、木がたっぷりと水を吸い上げるため剥がしやすくなり樹皮の採取ができるようになります。採取時期は7月下旬から9月の頭までの期間しか取ることができません」
生命力の強い山桜は、伐採跡から萌芽し30〜40年後には株立ちをして7〜8倍に増え、後世の山林・産業の維持に繋がるのだそう。樺細工の素材調達活動は山林の健全な再生サイクルに貢献する一面も併せ持っているのです。

樹皮は採取後に約3年間乾燥させ、職人の手によって研磨されることで写真右側の状態の樹皮が左側の光沢感のある深い色味が表れます。

山桜の樹皮は10種類に分けられ、これらの表情は研磨することで分かるのだそう。1枚1枚異なる模様や皮の硬さ・厚みを、職人の技と感覚で判断し、その皮に最適な加工を施していきます。(樺細工[茶筒]が出来上がるまでの工程については、4日目公開記事でご紹介します)

世界的にも珍しい、山桜の樹皮を素材に活用する
樺細工の多彩な可能性と魅力を世界へ

「世界的に見ても、木材の樹皮・その中でも山桜の樹皮を素材として活用するものは非常に稀有です。非常に強くしなやかな性質から、古くから強度が必要とされる暮らしの道具の主要素材として活用されてきました。木材の弱点とされる乾燥・湿気による変形にも強いため、茶筒のような精度の高い保存容器の材料となりました」薄さの調節や異素材との貼り合わせも可能で多くの応用性を秘めています。

「今後の展望としては国内はもちろん、EU・北欧市場を目指しています」と冨岡さん。「樺細工の素材調達や加工技術に見られる自然との共生に焦点を当て、エコロジー・エシカル・サスティナブルが必須要件となるEU・北欧のハイブランドなどに訴求し、今後もライフスタイルを豊かにしてくれる商品を作っていきたいですね」

▶︎次回公開【3rd day】暮らしに寄り添う、樺細工たちとお手入れ方法お届けします。

有限会社冨岡商店 営業本部・工場
Tel.0187-56-3239

秋田県大仙市上鴬野字熊野71-3

アート&クラフト香月(有限会社冨岡商店本店併設)
Tel.0187-54-1565

秋田県仙北市角館町東勝楽丁2-2

●アクセス/JR角館駅より徒歩20分

●営業時間/9:00〜17:00

定休日/8月13日、他年末年始

●ホームページ(冨岡商店)/https://tomioka-shoten.co.jp

●ホームページ(アート&クラフト香月)/http://ac-kazuki.jp

●オンラインショップ/https://tomioka-shoten.com

●Instagram/@to.mioka.shoten

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