仙台の手作り革鞄の職人さんに聞く 革製品の味わい方【1st day】

手のひらにしっとりとなじむ滑らかな質感と、時間と共に豊かな表情を魅せてくれる革製品。それは自分の歴史や思い出を一緒に閉じ込めてくれているかのように、ツヤや風合いとなって表れます。今回は、様々なシーンに合わせてさりげなく、それでいてキラッと光る存在感を放つ革製品がどの様に作られているのか、製作の裏側や革の味わい方、日頃のお手入れ方法などを、仙台で手作りの革鞄作りを行うHERZ(ヘルツ)仙台店のみなさんにお聞きしました。知れば知るほど味わい深さを増す革製品の魅力に迫ります。

Contents
1.【1st day】職人の姿が見える手作り革鞄のお店「ヘルツ仙台店」
2.【1st day】個性×個性で生まれる1点もの「革製品製作の裏舞台」
3.【1st day】ヘルツらしいが新しい「ものづくりへの想い」
4.【2nd day】ヘルツの革製品の魅力「天然革の味わい」
5.【3th day】時間の年輪 「経年変化の楽しみ方・革の育て方」
6.【4th day】長く、大切に育てるために「革製品のお手入れ方法」
7.【4th day】働く女性にドンピシャなアイテム紹介

1.職人の姿が見える手作り革鞄のお店「ヘルツ仙台店」

1歩扉をくぐると、革の匂いが心地よく漂い、ミシンとハンマーの音がリズムよく聞こえてくるのが何とも印象的なこのお店。ヘルツ仙台店は店内に工房が併設され、お店で商品を眺めている傍に職人の息遣いを感じることができます。店内で自分が眺めている鞄や革小物が、今まさに同じ空間で仕上げられていると思うと何だかドキドキしますね。

工房は店内の奥に約1/3ぐらいのスペースをとって、革の裁断から仕上げまでの全ての工程を行なっています。店内と工房の間に仕切りは無く、入口からも見渡せる距離感で職人さんの黙々と製作に励む様子を見て感じることができます。

ヘルツは1973年に創業者である近藤さんが、ひょんなことから1枚の革に出会ったのがきっかけだそう。「革鞄を作りたい」という想いから、現在に至るまで約50年間たくさんの人を魅了してきたお店です。現在は全国に仙台店を含む計7箇所に店舗があり、その全てがお店兼工房。多種多様な鞄の他、お財布や名刺入れなどの革小物を製作・販売しています。地下鉄南北線広瀬通駅よりほど近いところにお店を構えるヘルツ仙台店は、今年11月2日で7歳の誕生日を迎えました。

創業当時から機械的な分業体制ではなく、1つの商品に対して革の裁断以降の全ての工程を、完成まで1人の職人が行う商品製作。創業から作り手の作りたい気持ちを大事にした鞄作りを引き継ぎ、暮らしの道具である鞄を「持ちやすく、使いやすく、飽きのこない丈夫なもの。そして使うほどに持ち主に馴染んでいく」をコンセプトに450種類以上の商品を生み出し続けています。

作った人のこころがこもる鞄。使えば使うほど味わいを増し、使った人のこころの温もりも伝わってくるような鞄。1つひとつの商品にこころをこめて仕上げられる鞄や小物たち。そして何より、作り手の「好き」が原動力になった丁寧な手仕事。ドイツ語で「こころ」を意味するヘルツに、そんな作り手の想いがギュッと込められていました。
そんな鞄作りに対する情熱は店頭からもビシビシ感じることができます。

お店に入る前からヘルツワールドに魅せられてしまいます。店頭には経年変化で飴色においしそうに輝く鞄たちが並び、インパクト大。思わず目を奪われます。

店頭で一際目を引く、大きな鞄にたくさんの鞄がくっついたコチラ。大人1人がスッポリ入ることができるサイズ感です。(実際にスタッフさんが入っている様子もヘルツのHPで見ることもできますよ!)

店内に入るともう別世界。内装は木製ガレージを思わせる雰囲気で、どこか異国の工房を思わせます。棚や什器はもちろん、内装も全てスタッフさんたちのDIYで作り上げたという情熱っぷり。「ものづくりが大好き」という熱量がお店全体からもほとばしっています。

重厚な革で作られた多種多様なデザインの商品がずらりと並びながらも、どこか統一感を感じるヘルツの革製品たち。デザインはスタンダードっぽくもありながら、他にはないような個性がキラリと輝いています。

2.個性×個性で生まれる1点もの「革製品製作の裏舞台」

そんな情熱を持った作り手が集まるヘルツの革製品製作の様子の一部を見せていただきました!革製品製作の現場を見る機会なんてなかなかないので、とっても楽しみです!

こちらは店内から工房をチラッと覗くと目に飛び込む製作風景。現在仙台店では計8名のスタッフが在籍しており、全員が作り手でありデザイナーでもあります。製作から販売・発送・商品管理を一貫して行なっています。
「開店は12時からですが、スタッフたちは9時半には出勤し朝のミーティングののち、それぞれの製作や店舗での発送作業や商品管理を行なっています」と、販売・製作を担当している佐藤さん。

写真は開店前の様子です。みなさん真剣な表情で製作に向き合っています。ドキドキしながらお声がけすると、みなさんとても気さくな方ばかりで驚きます。店内と工房の間に仕切りはなく、誰でも工房の様子を見ることができます。また「ご来店の際、一声かけていただければ工房の中に入って見ていただいてもOKですよ!」とのこと。なんてあたたかい距離感…。

さっそく工房の中へお邪魔してみました。

厚みのある革を縫うための専用のミシンや、ハンマーなどの道具がところせましと並んでいます。 数多くの道具がありながらもすっきりと整理された工房に、 手仕事に真摯に向き合う姿勢が反映されています。
ヘルツでは創業当時から、注文が入ったのちに1つひとつの工程を手仕事で手がけます。裁断専任の作り手が革を切り出した後の全ての工程は1人の作り手が担います。1枚の革からたくさんの工程を経て立体的な鞄が出来上がる、その流れを一緒に見ていきましょう!

1.裁断

革の裁断専任の作り手が、製作する全ての商品に使用する革を切り出しています。革の特性や個性、製品の構造を理解していないとできない重要な役割です。
★【2nd day】「ヘルツの革製品の魅力」でより深く見ていきます!

多数の面や細かなパーツなどの組み合わせでできている鞄は、1つの鞄でも10以上のパターンから形作られています。工房では膨大な量の型紙が保管されており、型紙を管理・更新するのも裁断担当が担います。よく見ると、天井にも型紙がストックされています!

2.漉き

革が重なり合う面やマチなどの部分は漉きの加工が必要です。革を薄く漉くことで縫製や成型がしやすくなります。しかし漉きすぎると丈夫さが損なわれてしまうため、これは最も難しい工程の1つだそう。そのため漉く場合もできるだけ厚みのある状態を保ちながら塩梅を見て行います。漉き機やミシンのメンテナンスも作り手が毎日点検します。

3.仮止め

縫製の前に、強力な専用のテープや接着剤を使用しパーツとパーツを仮止めします。革の状態に細心の注意を払いながら、ハンマーでしっかり圧着させていきます。お財布や名刺入れなどの小物類も同じ工程で行います。

4.磨き

革の切り口に染料を塗り磨く工程も全て手作業。パーツごとに1つずつ丁寧に、力を込めて磨きます。そうすることでより風合いが増します。

5.縫製

専用のミシンでの縫製工程。作る鞄や小物によってミシンも使い分けながら、厚みのあるヘルツの革を力強いステッチで縫っていきます。
お話をお聞きしていて気がついたのが、全ての机やミシンにライターがセットされていること。「糸がナイロン製なので、ライターで糸を切ると熱で切り口が溶接され固定もできるんです」と作り手の増澤さん。磁石でミシンにサッとくっつく仕様で、少ない動作でテキパキ製作が進みます。

6.成型

鞄の種類によって、内縫いのものは縫製後、表面にひっくり返す工程があります。分厚い革で作っているため、全体の形が崩れないよう熟練の技術で行います。その後全体的に形を整えて完成します。

他にもたくさんの細かな工程を経てヘルツの鞄は作られています。1つの商品につき裁断以降の工程は全て1人の作り手が完成まで手がけるため、同じ商品でも1点1点個性が異なります。作り手にとってやりがいに直結する傍ら、責任・緊張感とも常に隣り合わせの手仕事。これまで培われた知識と経験と確かな技術で仕上げられる商品は、まさに世界で1つだけのとっておきです。

3.ヘルツらしいが新しい「ものづくりへの想い」

専属のデザイナーはおらず、作り手全員が新しい商品を生み出すデザイナーであるヘルツ。「型にはまらないけどヘルツらしい」が伝わってくるアイテムたち。1つひとつの工程こだわりを尽くして向かい合いながらも、遊びごころは忘れない。そんな作り手の遊びごころやアイディアが自由に交し合えるからこそ、次々と魅力的な新しい商品が生まれています。
新作の考案は日々、色々な時間、色々な作り手たちによって行われています。作り手たちが「いいと感じたもの」「納得のいくもの」ができた時が、新作が発売される時。なんだか素敵ですよね。
長く愛され続けている理由の一面が垣間見えました!

▶︎ 次回【2nd day】では、「ヘルツの革製品」を通じ、革製品の魅力をお届けします!

DATA

HERZ 仙台店
TEL022-395-7461

仙台市青葉区本町2-10-33 第二日本オフィスビル1F

・アクセス 地下鉄南北線「広瀬通駅」より徒歩約5分
・営業時間 12:00〜19:00
・定休日 水曜・木曜
・ホームページ https://www.herz-bag.jp/shop/sendai
・Instagram @herz_bag

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