ヘルツの革製品の魅力「天然革の味わい」【2nd day】

堅牢で厚みがありながらもやわらかく、ナチュラルな風合いが魅力的なヘルツのレザーは、素材開発までに20年以上の歳月をかけて仕上げたといいます。長い時間と手間をかけて追い求め、厳選した牛革素材に植物から抽出したタンニンで丹精になめし、できる限り少ない表面加工を施すことで革本来の表情が活きるよう染色し仕上げた貴重なオイルレザーの素材です。
革の産地として名高いイタリア・トスカーナの皮から革を作り上げる職人タンナーが細やかな手仕事で、革製品の生命線である革を作っています。

革は自然の産物のため、1枚1枚表情が異なる難しさに試行錯誤を繰り返しながら、現在のあたたかな風合いを持つデザインになったと教えて下さったのは、ヘルツ仙台店の革裁断のプロ庄子さん。
「イタリア人とタンナーさんと打ち合わせを重ね、たくさんの無茶を聞いていただき今の風合いが出せるようになりました」と話します。

種類ごとに革を広げて見せてくれる庄司さん。厚みはもちろん、表面の表情も1枚1枚個性が異なるのが分かります。全く表情の違う革たちですが、元は同じ牛の皮から作られていると聞いて驚きました。元々5〜6mmほどある厚みの皮を革へ仕上げる段階で、漉きや磨きによるツヤの有無・着色などを施すことで異なった風合いを作り出していくそうです。

「これ1枚が牛1頭分の革です。牛革は頭の方がやわらかく、お尻の方が硬いんです。そのため、お尻の方の革にはシワが少ないのが特徴ですね」。
個性豊かな革の表情は、天然であるからこその味わいです。そんな革の表情から、牛が生きていた頃の歴史や自然の息遣いを感じると庄子さん。

「牛が生きていた頃の歴史ですか?」
「そう、生き物だからね。背中部分にトラ(シワが寄りやすい部位の筋状の縦模様)が多い子とか、やんちゃな牛の革には生きていた頃に枝で引っかけてできちゃったキズとか虫刺されの跡なんかがあることがあるんですよ(笑)。だからこの1枚の革を見ると、その牛の一生が見えるというか。あ、これ虫刺されだね」よく見ると小さな点が見えます。

特に虫が出やすい夏は虫刺されも多くなるため、革の状態を見ると「これは夏の牛だな」というのも分かってくるそう。なんだか新鮮な気付きです。「逆にキズや虫刺されの跡がない革を見ると、あぁこの子はお上品だったんだなぁと思う」と笑顔です。

↑こちらがお上品だった牛の革。キズの有無もそうですが、シワの入り方も全く異なりますね。

天然革だからこその表情を活かすため、表面への加工を最小限にとどめ革本来の自然な風合いを大切に作り上げた革。仕上がるまでの課程のエピソードを聞くと、より愛着を持って革製品を大事に使えそうです。

ちなみに、革に見られるこの牛が生きた証とも言える風合いにはそれぞれこんなものがあります。

①バラキズ
引っかいたようなキズのことで、牛が生きていた頃に引っかいたり、枝で引っかけるなどした時に付いたキズ跡のこと。
②トラ
作り手の間で呼ばれる、筋状の縦模様のこと。首や肩の周り・背中などのシワが寄りやすい部位によく見られ、個体によって模様の入り方は異なります。またトラの入る部位は限られるため、革ファンの中にはこのトラ好きも多い。全ての革に入っている訳ではないため、これも出会いの1つ。
③血筋
葉脈のような模様のこと。人間の手の甲に見られる毛細血管と同様、牛の皮膚のすぐ下を血が通っていた跡。形や残り方も個々で異なり、これも革らしい表情を演出してくれる重要な要素の1つ。
④色ムラ
人間と同じように1枚の革の中でも、キメの細かさや風合いが異なることで表れる模様。染色した際の色の濃淡となって表面に表れることもある。こういった色ムラは染色した時に初めて出てくる。

その他、革独自の香りや手触りなど天然だからこその表情や愛嬌を楽しみながら、革製品と長くお付き合いしていきたいですね。

ヘルツで使用している革は大きく分けて2種類・各5色展開

「ラティーゴ」と呼ばれる、スタンダードなスムースレザーは堅牢で厚みがあるのが特徴です。鞄の作りによってラティーゴのハードとソフト(革の厚み)を使い分けるそう。
「スターレ」と呼ばれる革は、やわらかく革本来のシボ・シワが特徴的。シボの入り具合も革によって全く異なります。ラティーゴレザーに比べて薄くやわらかい仕上がりです。

色はキャメル、チョコ、ブラック、グリーン、レッドの5色展開です。職人が手作業で染色するため、同じ革であってもその時々によって絶妙な違いが生まれるのもまた味わいです。

数年先を見据えて刃を入れる裁断という手仕事

天然革を扱う上で、裁断の視点からものづくりの中で意識していることをお聞きしました。

「約6年前にヘルツに来て、製作全般に関わる中で気付いたら裁断専門になっていました(笑)。裁断は型紙に合わせて切るだけではありません。1枚の大きな革のどの部分を鞄の顔にするか、どのパーツにどの部分の革を使うかを考え、導き出し裁断します」

中には注文を下さったお客さまの好みを反映させながら裁断を行うこともあると庄子さん。

「ヘルツのモットーである、丈夫で長持ちする鞄を念頭に、革の持つ味やクセを意識し数年先の状態を見据えて裁断しています」と話します。

裁断された革は以降の工程を担う各作り手に渡り、成型後は厳しい検品を経てようやくお店へ並べられます。 1つ1つの商品に職人の知識と経験と技が詰まっていますね。

現在は5〜6週間待ちだそうです。

工房の中にはこんな機械も

工房の壁一面にかけられているコチラ。これは鞄のベルト部分などの登場頻度の高いパーツを切り出すための型だそう。ものすごい数の種類があります。
足元に何気なく散らばる型抜き後のパーツもなんだか可愛いです。

そしてこの裁断スペースでどうしても気になってしまったコチラ(下の写真)。この写真右奥のツヤやかなチョコレート色の鞄。

ツヤ感から、普段から使用されている個人のものかと思い「そちらのバッグは庄子さんの私物ですか?」と聞いてみました。

よく見たらその奥のブラックのバッグも個性がすごい。
「奥のブラックの鞄はサンプルで先輩が作ったやつですねー。手前のこれは“旅モノ”で自分で作った鞄です」
「旅モノってなんでしょうか?」

「ヘルツのスタッフが社員旅行に行く際に、“その旅に持っていきたい鞄”をテーマにそれぞれ作品を作るんです」
「なんですかその楽しい催しは!」
「ちなみにこの鞄はイタリアの革工場へ見学も兼ねて社員旅行に行った時に作りました」
しかもこの旅モノ、スタッフさんの間で品評会が行われ改良を加えたのち販売もされるのだとか。こういう自由な発想と「好き」の気持ちがあふれるものづくりが、たくさんのファンを魅了している理由なのだと納得。そして1つひとつにエピソードがすごい。深い。広い。
お話をお伺いすればするほど、面白いお話が飛び出してきて時間を忘れてしまいます。

そんなスタッフさんたちのあふれ出るアイディアが製品になるまでの一面を知ることができるデザインラフも見せていただきました。
しかもこのデザインラフの商品サイズはほぼ実寸大で描かれているのだとか!こちらはtakefleeで店内に設置されており、お持ち帰りすることもできます。

▶︎ 次回【3th day】では、おいしそうな色合い「経年変化の楽しみ方・革の育て方」をお届けします!

DATA

HERZ 仙台店
TEL022-395-7461

仙台市青葉区本町2-10-33 第二日本オフィスビル1F

・アクセス 地下鉄南北線「広瀬通駅」より徒歩約5分
・営業時間 12:00〜19:00
・定休日 水曜・木曜
・ホームページ https://www.herz-bag.jp/shop/sendai
・Instagram @herz_bag

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