新しい音楽との出会いをお届け Flesh Music vol.13 – 半﨑美子 –

仙台で活躍する女性プロモーターの二郷さんとルチカ編集部が突撃取材する音楽企画「Fresh Music」。今回よりLuccica web記事としてリニューアル!引き続き、仙台の女性へ新しい音楽との出会いをご紹介していきます♪

全国のショッピングモールを回り歌う「ショッピングモールの歌姫」として数々のメディアに取り上げられ、話題となっている半﨑美子。
今作は3.11にリンクし、東北の人が何か思いを寄せる作品。

今作「布石」について

2020年は、北海道から上京して20年という節目です。2000年3月に、パン屋さんの住み込みで働きながら曲を書き続ける日々を始めました。20年という節目に、自分が残す作品としてどういう作品を書きたいかと考えたときに、1つのことを続けるということは、様々なものを諦めたり、手放すことだと思ってるんですけれど、その強さとか、かけがえのなさを歌いたいと思いました。音楽に限らず、スポーツでも、仕事でも子育てとか介護とかあらゆるものに言えると思うんですけれど、一途に続けることでしかたどりつけない今日というのを尊ぶような気持ちで書きました。

どんな20年でしたか?

2017年にデビューしたので、デビューでいうとまだ3年足らずで、そういう意味ではそんなに長い期間ではないのですが…下積みと言われていた17年は、自分が個人でショッピングモールを回っていた期間で、その17年があったからこそ今に繋がっています。17年間下積みってよく言われるんですけれど、自分では下積みという感覚が全くなかったですし、すごく必要な17年でした。そして20年は1 日も無駄な日は無かったとすごく思うんですよね。

半﨑さんにとってのショッピングモールとは…?

ショッピングモールで歌っていることが下積みと捉える方がすごく多くて…メジャーになってから、「メジャーデビューしてもショッピングモールでやるんだ」なんて言われますが、私にとってはショッピングモールってそんな場所じゃないんです。すごく大事な場所で、絶対になくてはならないというか、メジャーデビューしたからどうとか関係ないですし、むしろメジャーデビューしたからこそ、行きたいと思う場所です。非日常ではない、日常の空間で生活に根ざしている場所で自分の歌を届けることに意味があったし、そこでたまたま偶然買い物に来た人、通りがかった人と出会える希少な場所だったので。

人がいない中でのライブに「もう嫌だ」と挫折は?

自分でも不思議なんですけれど、「もう嫌だ」がなかったんです。当時、司会の方もいないので、「それでは半﨑美子さんにご登場頂きます、拍手でお迎えください」と自分で陰で言って出て行ったり、終わってからも「ただいまより半﨑美子さんのサイン会を行います」と事前に録音したものを流したりと自己完結でやっていて。よくあの環境でやっていたと今、思うことがあるんですけれど、当時は必死すぎて、悲観する余裕もないというかそれどころじゃないという感じでした。ある種すごく正直な場というか、途中で席を立ってもいいわけですし、立ち止まらなくてもいいわけですから…いろんな意味で試される場所でもあったんですけれど、すごくやりがいもありました。1人涙しながらCDを買いに来てくれる人がいると、色々なことがあってもやっぱりあの会場に行きたいな、あの人に会いたいなと思ったので、それが自分の原動力にもなりました。

それに、どちらかというと、人が止まってくれない・聞いてくれないとなると、じゃあ、どうしたら止まってくれるかな、集まってもらえるかな?というのを考えていく客観性が身についたんですよね。上京した時は主観だけで生きていたので、自分の歌を聞いてください!自分の歌はこれです!みたいに発信することだけを考えていて、自分の歌に根拠のない自信を持っていたんですが、ショッピングモールで歌うようになって、どうしても主観だけでは成立しない環境になった時に、受け取る力というか、発信よりも受信するということの大事さを身をもって体感したんです。

ずっと主観のままでやっていたとしたら「この人たちは私の歌が届かないんだ、辞めよう」となっていたかもしれないです。そうではなく、お客さんの立場になった時にどうなったら聞きやすいかを徹底的に考えるようになりました。椅子の間隔がこうあって、ここに通路があったら前に座りやすいなーとか、その場で空席があれば椅子をとって空席を減らすとか。ポスターの貼る位置も導線がここだから見やすい位置はここだとか、ステージがエレベーターを降りたところすぐだと、皆さん立ち止まりづらいかなとか。そういう1つ1つを気付けるようになったのはすごく財産ですね。

パワーの源は?

ゆるぎないものというか、音楽だけは一途になれたんですよ。学生の頃はなんでも続かなくて諦めてしまうような性格でしたが、音楽に出会ってすごく変わりました。音楽活動を通して出会った方たちによって、自分自身の心のあり方とか曲自体も変わりましたし、一つ一つの出会いや、たった一つ言葉に支えられたり、報われたり、救われたりしてきたので、そういう意味では出会いが自分自身をゆるぎないものにしてくれたというのはありますね。

「サクラ〜卒業できなかった君へ〜」のレコーディングに、仙台南高校の合唱部の生徒さんが参加されたことも出会いですよね?

2017年にこの曲を発売してからずっと、ショッピングモールはもちろん、学校、施設、病院、被災地とどこの会場でもたくさん歌ってきたんですけれど、仙台南高校の合唱部の生徒さんと、仙台フィルの皆さんと、昨年の復興コンサートで「サクラ〜卒業できなかった君へ〜」を歌った時に、この時ほど、この歌に祈りが宿っていて、それが本当に空に届いている感覚になったことはありませんでした。

この出来事がすごく忘れられなくて、歌をこういう形で残したい、単純にそう思ってお願いしたんですけれど、実際にレコーディングに立ち会って、「あ、やっぱり」と確信に変わりました。生徒さんからメッセージを頂いたのですが、曲の歌詞にある「あなた」が、生徒さんにとっての「あなた」は震災で亡くなった同級生のことで、聞いている人それぞれの「あなた」に届くように歌いましたとメッセージを頂いたときに、だからこそ、自分がそれまでにないものを感じたのかなと改めて思いました。

今回のツアーはどんなツアー?

上京20周年ということで、全国6カ所で、念願の宮城でも開催が決まりました。年に1度の「集大成コンサート」は東京だけで開催してきていたので、宮城の方も東京まで来てくださっていたのですが、やっとこちらから行けるなという思いです。また、普通のコンサートは宮城でもやったことはあるのですが、この「集大成コンサート」は1年間自分が受け取ってきたものをストーリー仕立てにしてお届けする2時間半のステージ作品なので、普通のコンサートと違うんですよ。単純に時間が長いということだけでなく別物なので、これを宮城で開催できるという喜びと、今回は1年の集大成というより20年の集大成として特別なものになると思います。

この先、20年はどうなりたい?

「私よりも自分の歌が長生きする」ということが1つの夢です。自分がこの世からいなくなっても歌が残って、歌い繋がれていくために、「学校の教科書に載る」ということが具体的な夢で。昨年「明日への序奏」という曲が教科書ではないのですが、中学校の教材に載って少し夢に近づきました。これからの20年は教科書に載ることもそうですし、残っていくものを作り続けたいという気持ちです。あとは、直接届けることは自分の中で欠かせないものなので、ショッピングモールもコンサートもそうですけれど、細かくずっと回って直接届ける活動をしていたいです。ショッピングモールは間違いなく、自分の糧になっていますね。
天童よしみさんに歌を書かせて頂いて、自分で歌う以外の可能性をすごく体感させて頂いたので、普段は自分からわっと湧き上がったものが作品になっていたりするんですけれど、そういう形で作品作りを、作詞作曲家ではないんですけれど、自分自身がアーティストとして歌ってではない部分もトライしていきたいです。

Profile|半﨑美子
北海道の大学在学中に音楽に目覚め、大学を中退し単身上京、パン屋に住み込みで働きながら曲を書き続けた。歌うと会場のどこかで必ず涙を流す人がいる。そんな個性豊かな歌声とメッセージ性に富んだ歌詞、そして生き方そのものに共感する人が全国から集まり、どこにも所属することなく、個人で東京・赤坂BLITZの単独公演を3年連続開催、ソールドアウトさせた。人の心に寄り添いながら作る歌は、全国のショッピングモールを回り歌い続け、出会った人々の人生に触れ、涙に触れて、生まれた。「ショッピングモールの歌姫」として数々のメディアでも取り上げられ話題となり、17年の下積みを経て、2017年4月にメジャーデビュー。
オフィシャルページ:https://hanzakiyoshiko.com

MUSIC
5thシングル「布石」発売中
LIVE DVD『「うた弁2」発売記念コンサートツアー2019銀河鉄道39★きらり途中下車の旅』発売中
レーベル : 日本クラウン株式会社

Live
「上京20年記念 半﨑美子 集大成コンサートツアー2020」
日時:7月26日(日)開場16:30 開演17:30
会場:トークネットワーク仙台大ホール
お問い合わせ:キョードー東北 022-217-7788
http://www.kyodo-tohoku.com/artist_page.php?a_id=956

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