【特集】職人の世界に触れる。vol.1 靴職人と豆腐職人のこだわり

靴職人|注文靴屋カルツ・赤松まゆみさん

 子どもの頃からずっと靴が好きだったものの、なかなか自分に合う靴を見つけられなかったという赤松さん。「見つからないなら自分で作ろう」と、靴職人の道へ進んだ。「足と靴の学校フロイデ」「自作工房ヒロ」で学んだ後、靴屋などで技術を磨き、2014年に「注文靴屋カルツ」をオープン。学校では、足の骨格や筋肉の構造を学んだ上で靴作りの技術を教わり、より履きやすく歩きやすい靴作りの基礎を築いた。

 注文に来る人の多くは、足が小さい、大きいなど「市販のものが合わない」と悩んでいる方。特に女性のパンプスの注文が多いのだそう。「おしゃれなだけで履いていて痛いのは辛いし、自分にぴったり合っていても、好みのデザインじゃないのは嫌ですよね。おしゃれで、かつ、履きやすい、そんな靴が最高ですし、靴はそうであってほしいです。」そう語る赤松さんが靴づくりで1番こだわるのは、木型の作成。足の約30か所を細かく採寸し、実際に足を触って関節の状態や足の柔らかさ、たこやマメの場所などを確認すると、その人のサイズに合わせて、プラスチックのベースにロウで肉付けをしていく。「ここが合っていないとすべてが狂ってしまう、靴のベースとなる部分です。ここまで細かく採寸するオーダーメイドの靴は珍しいのではないでしょうか。」

木型を作る作業は、1つ出来上がるまでに何日もかかる根気のいる作業。1mm変わるだけでも履き心地が変わってしまうため、0.1mm単位で調整していく。名前や出生時の体重を入れられる、贈り物・記念品として人気の子ども用靴(15,000円+税)。フランスでは、「素敵な靴は素敵な場所へ連れて行ってくれる」という考えから、子どもに靴をプレゼントする習慣があるのだそう。

 靴作りは、ゴールのないものだからこそ面白い。足の形は1人1人違い、左右でも違う。加えて、パンプスは足の甲を覆う部分が少なく、サイズがぴったりでないと脱げやすく特に歩きづらいため、オーダー靴の中でもかなり手間のかかるもの。「どうしてもお仕事で必要という方も多いですし、少しでも快適に過ごしていただきたいという想いです。作ったものが合わなかったときに、どうして合わなかったのか、という選択肢がとても多くて。同じ靴であっても、毎回まったく違うものを作っている感覚です。」

 「自分にぴったり合うサイズの靴って、たぶん売っていないんです。」限られたサイズの中で展開される市販の靴は、誰でも履けるように作られている分、逆に誰にもぴったり合わない仕様なことがほとんどなのだそう。注文靴カルツでは、フルオーダーで靴を作成することはもちろん、既存の靴が履きやすくなるよう、中敷きを敷いたりヒールを削ったりといった靴の調整も受付けている。女性ならではの靴の悩みをするりと解決してくれそうな、頼もしく、真っすぐで凛々しい職人の姿がそこにあった。

注文靴屋カルツ

仙台市青葉区立町21-5ライオンズマンション西公園第二103(菅沼靴工房内)

TEL080-1857-1287


革スリッパのワークショップ

イタリアのベジタブルタンニンレザーを使用したスリッパを作るワークショップ。革に気軽に触れられ、4種類の色とサイズ・糸10種類からお好みに合わせて選べる。

【予約制】 定員6名
【月1回開催】 9月…9月16日(月)9:30~12:30/14:00~17:00

豆腐職人|兎豆屋〈とまめや〉・安達圭介さん

 8月6日(火)で5周年を迎えた兎豆屋〈とまめや〉。以前webディレクターとして仙台で働いていた店主の安達さんは、偶然見つけた「豆腐職人見習い募集」の求人を出していた師匠の生き方と豆腐のあまりの美味しさに惹かれ、仕事を辞めて東京へ。東京都葛飾区の老舗豆腐屋「埼玉屋」で2年間の見習い修行をし、大豆本来の豆の味、甘みが最大限引き出される製法を受け継いだ。

 兎豆屋の豆腐の1番の特徴は、加水量を限界まで抑えた濃い味わいと大豆の風味。甘みも強いため、醤油や塩のほか、メープルシロップや黒蜜などデザートとしても楽しめるというから驚き。宮城県産の大豆「ミヤギシロメ」を使用するなど、国産大豆の中から厳選したものだけを使用している。仕込み前日の夜から大豆を水に漬けるが、その日の気温・水温によって吸水率が変わるため、毎日細かい調整が必要なのだそう。さらに、大豆を炊いて豆乳を作る作業においても、どれくらい炊くかは蒸気の香りや見た目、かき混ぜているときの感触といった「感覚」での判断。「絶妙な加減がうまくいって最高に良いものが出来た日は、思わずにやけちゃいます」。

出来上がったばかりの、白くピカピカに輝く豆腐。手作業でひとつひとつ丁寧に切られ、パック詰めされる。仕込み作業は毎朝6時から。「朝早くから作業するので、どうしてもビルの1Fなどは借りられなくて…ちょうどいい一軒家を探すのに苦労しました」なんて話も。店内には、いままで使用した様々な種類の大豆が。並べてみると色合いもカラフル!

 そんなこだわりの豆腐たちは、毎年行われる全国豆腐品評会 東北大会に出場し、いくつもの賞を獲得している。2018年に品評会で最優秀賞を受賞した「づんだおぼろ」は、山形の秘伝豆という青大豆の一種を使用した豆腐で、枝豆のような緑色が特徴。宮城らしさと兎豆屋のこだわりがどちらも詰まった自信作だ。

 Instagramの写真やwebのデザイン、商品のパッケージなど、女性が思わず目を惹いてしまうシンプルで可愛らしい作りにもこだわる。「広報や写真などはすべて妻に任せています」という安達さん。女性ならではの視点で作り込むからこそ、より多くの女性ファンを獲得しているのかもしれない。

 「スーパーではなく豆腐屋で豆腐を買うことの1番の意味は、作り手の顔が見えることだと思います」と安達さんは語る。豆腐店によって、作り手の想いやこだわりの部分、目指すところが違うため、食べ比べるとその味の違いは歴然。「いろいろな豆腐屋を食べ比べてみながら、もっと豆腐を楽しんでいただけたらと思います」。今後は、より店の名前を広めていくべく、豆腐づくりはもちろんのこと、店づくりや雰囲気づくりも女性目線からさらに極めていきたいと語る。昔ながらの完全手作りで仕上げられた豆腐たちは、店とともに、今後さらにアップデートされていくのだろう。

兎豆屋

仙台市青葉区福沢町4-52
TEL022-702-4168

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