【特集】今、振り返ろう 3.11を経てできること vol.1

まずは備えよう。
災害は必ずやってくる。振り返りながら、
今できることを実践していこう。

公助活動の限界を痛感

編集部(以下編) 震災が起こったあの日、及川さんはどちらに勤務されていたのですか。
及川さん(以下及川) 当時は若林消防署勤務でした。地震が発生してすぐは、そこまで火災出場や救助要請がありませんでした。ただ、少し経ち、上空から偵察していた消防ヘリコプターから酷く慌てふためいた無線が入りました。「物凄い津波が来ている」―と。そこからは一分一秒を争うものでした。沿岸地域に避難広報活動に出ていた隊員を呼び戻し、鳴りやまなくなった救助要請に対応し。それでも全ての要請に到底応えることは出来ませんでした。
 何もかもが、想定外だったと。
及川 そうです。災害時のマニュアルに従い行動していましたが、マニュアルの域を超えており自身の無力さ、そして公助(※1)活動の限界を痛感しました。
 ご家族は無事でしたか。
及川 幸運なことに無事でした。夫の無事も確認し、子どもの無事もその日の夜には分かりました。保育園に通っていたのですが、近くの親戚が引き取ってくれまして。
 連絡手段がほぼ不通の中、ご家族の無事を確認できたのは何よりですね。
及川 そうなんです。メールやSNS、災害用伝言ダイヤル(171)、遠くの親戚を介しての連絡など、無事を確認できる手段を複数準備しておくのは必須だと思いました。家族や親しい人の無事が分かる、それだけで得られる安心は絶大だと思います。
※1(公助)…市役所や消防・警察による救済活動や支援物資の提供など、公的支援のこと。

仙台市危機管理室減災推進課
減災推進係 及川由佳里 さん

東北初の女性消防官として仙台市消防局に採用。消防隊員、救急隊員等災害対応の現場での勤務を経験。2016年4月から仙台市危機管理室減災推進課に所属、2017年4月からは5代目仙台市地震防災アドバイザー(現 仙台市防災・減災アドバイザー)として活躍中。2児のママでもある。

もしもの時に必要なモノ

 震災が発生し生活が落ち着くまで、必要だと痛感したモノを教えてもらえますか。
及川 あの時3月だったのに雪が降ってすごく寒かったですよね。防寒着や防寒グッズの備えが万全だったら、と思ったのを覚えています。あとは、袋タイプのトイレですね。
 車内など、トイレに行けない時に使うタイプのものですか?
及川 そうです!ホームセンターや、100円均一ショップにも置いてあります。アパートやマンションにお住まいの方は特にあった方が良いですね。下水管が破損し使えなくなることもありますので。
 うーん、そうですね。
及川 あとはカセットコンロが1台あると便利です。ガスが不通でもお湯を沸かしたり、料理も作れます。ただ、ボンベの有効期限は7年程度になりますので循環・備蓄しておくと◎だと思います!また、自分がよく好んで食べていて、賞味期限がなるべく長い食べ物があると良いですね。
 非常食でなくても良いのでしょうか?
及川 はい。乾パンなど、食べ慣れないものを急に我慢して食べるよりは、普段食べているレトルト食品や缶詰、栄養補助食品などがあるとストレスなくお腹を満たせますし、好きなチョコレートや飴は心を落ち着かせる一助になります。
 確かに!「女性として」必要だと思ったモノはございますか?
及川 生理用品ですね。生理が来てしまったけれど手元にないし店がやっていないので購入できない、持っていたナプキンを使い切ってしまったら…といった声を耳にしました。
 女性にとっては死活問題です。
及川 生理ではない時も持ち歩いたり、職場にストックとして置いていると良いですね。自宅には2周期分あると安心だと思います。また、マスクはあった方がいいですね。メイクが出来ないことはもちろん、洗顔も歯磨きも出来なかったので。何枚か、自身のバッグにしのばせておくことをおススメします!

(右)水を入れたペットボトルを下からミニライトで照らして灯り代わりに。(左)新聞紙で作ったスリッパ。災害発生時、裸足では歩けない場合や避難所に行かなければならない際、作れると便利。※スリッパの作り方は「古新聞紙防災 仙台」で検索

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