器と歴史と暮らしに触れる「出雲民藝館」【4th day】

出雲地方きっての豪農であった山本家の邸宅を一部改修し、そのまま展示館として使用している「出雲民藝館」。本館・西館館内には陶磁器、漆器、木工品、染織りなど島根を中心に全国から集められた品々が展示されており、売店では地元の作家による器や染物などを販売しています。

今回はそんな出雲民藝館の歴史や、展示されている民藝品について出雲民藝館の山根信夫さんにお話をお聞きしました。

編集(以下:編)「よろしくお願いします!」
山根さん(以下:山)「仙台からようこそお越しくださいました。出雲民藝館にいらっしゃるお客様は圧倒的に女性が多く、ルチカ読者さん世代の方も多いですよ。皆さん出雲大社さんなどに寄られてから、館内を見て売店で器などのお土産を買われていきます」

出雲民藝館の建物は、現在も山本家の住宅として使われる「母屋」を中心に、出雲大社造営の棟梁が延享3年に建造したという「長屋門」、明治12年に建造された本館である「米蔵」、明治中期に建造された西館である「木材蔵」ど歴史的価値の高い建物です。

名家でありながらも山本邸は家の中も外も質素簡潔な、無駄な装飾のない直線的な佇まいが印象的です。

山本家歴代の人々の質素を重んじる志と、出雲の風土にもとづく大工や左官の技が、邸全体を民藝品そのものとして活かしていると言えます。

長屋門の入り口には、当時の家主がお寺などにお参りした時の木札が貼られており、中には安政や文化という文字も見え、生きた歴史を感じることができます。

本館は3,000俵もの米俵を収蔵していた米蔵を改装した建物です。江戸末期から昭和初期にかけてのものを中心に、布志名焼、石見焼をはじめとした陶磁器、藍染や木綿絣などの染織り、木工品などの、暮らしの道具を展示しています。

展示されているそのどれもが、装飾品や趣味品ではなく人々の暮らしの中で使われてきたものばかり。無駄な飾りのない健康的な美しさがあり、山本家の建物に自然と溶け込むように展示されています。中には、一見おしゃれなタペストリーに見える筒描き染めで仕上げられた藍染の大小様々なこちら。みなさん何だか分かりますか?

これらは、右から子どもを背負うおんぶ紐、中央上が赤ちゃん用タオル(湯上げ) 、中央下がオムツなんです。どれも当時、実際に暮らしの中で使用されていたものです。館内に展示されているもの全てに、大事に使われてきた暮らしの道具が持つ独特の美しさを感じます。



床には当時から使用されていた来待石が敷き詰められています。古さを感じないしっかりとした作りと、互い違いに斜めに入ったラインがおしゃれです。

続いて西館へ。西館は木材蔵を改装し、民藝の流れを汲んだ山陰の作り手による近代の民藝品が並びます。その他、先人たちの暮らしを支えた農工具も展示されています。



単に骨董品を鑑賞するための場ではなく、そのような品を使う暮らしの美しさや考え方を世に伝えることを目指しています。西館内にはこんなものも。

普段使いされていた焜炉(こんろ)や祝凧高橋の作品も。



また、長屋門の上には1つひとつ表情の異なる鬼瓦が。四方に睨みをきかせ、悪いものから家を守る役割を担っているそうです。



そして売店へ。売店は長屋門の一角にある建物を利用した造りになっています。靴を脱いでおじゃまします。



陶磁器や木工品、和紙など、島根内の各工房の作品を中心に全国から集めた選りすぐりの品々がずらり。お気に入りを購入することができます。

展示を見た後実物にふれることで、民藝をより身近に感じることができます。写真手前は島根県松江市の創業大正11年の湯町窯の作品。

こちらは島根県 垣内信哉さんの作品。

その他、各工房さんの作品が並んでいます。



島根県指定無形文化財に指定されている、長田染工場の藍染ストールも。

職人の技が集結した売店で、お気に入りの暮らしの相棒を見つけてみてはいかがでしょうか。

DATA

出雲民藝館
TEL0853-22-6397

島根県出雲市知井宮町628

・営業時間 10:00~17:00(最終入館16:30)
・定休日 月曜(祝祭日の場合は翌日)、年末年始
・入館料 大人500円、小人100円(特別展開催中は別途設定)
・ホームページ http://izumomingeikan.com

12.日が沈む聖地に舞う神話の世界「出雲神楽」

島根県出雲市宇那手町に伝わる「宇那手神楽(うなてかぐら)」は、伝統に沿った王道的な出雲神楽で、ゆったりとした舞と洗練された奏楽が特徴です。宇那手神楽は今なお出雲神楽の古い形態を受け継いでいるとして、平成30年に出雲市無形民俗文化財に指定されました。

今回、出雲神楽 の舞台となるのは島根半島の西端、青い海の直ぐ近くにあり緑に囲まれ鎮座している古社の「日御碕神社」。伊勢神宮が「昼を守る神社」であるのに対し、日御碕神社は「夜を守る神社」として知られています。「神の宮」には素戔嗚尊(すさのおのみこと)、「日没宮」には天照大神(あまてらすおおみかみ)が祀られており、商売繁盛、厄除け、縁結びなどにご利益があるとされています。

出雲神楽は国重要文化財の朱色の社殿が目を引く拝殿で行われました。公演が始まる前に、今回公演をされる「宇那手神楽保存会」会長の三島清司さんにお話を伺いました。

編集(以下:編)「よろしくお願いいたします!」
三島さん(以下:三)「よろしくお願いします」

編「宇那手神楽保存会さんは現在何名ぐらいで活動されているのでしょうか」
三「20代〜80代までの23人のメンバーと子どもたちと一緒に活動していますよ」
編「幅広い年代層の方達が活動しているのですね!」
三「そうですね、その中でも私たちの会は若手が多く所属しているのが特徴ですね。神楽保存会はどこも若手がいない問題があるのですが、私たちは幸いにも若手が集まってきてくれています」
編「宇那手神楽は、地域の人たちの間ではポピュラーな存在なのでしょうか」
三「地域によって異なりますが、宇那手町では幼稚園や小学校の学芸会で神楽に触れる環境があります。子どもの頃に神楽に触れた人が、大人になって始めたいと来てくれる人もいますよ」

宇那手神楽の起源は不明とされていますが、少なくとも近世には舞われていた記録が残っており、昭和34年に今の保存会が結成され、伝統芸能の保存と継承に努めてきたそうです。

編「本公演の演目と見所についてお聞きしたいです!」
三「今回の演目は子ども神楽で、面を付けずに舞う“七座”に属する塩清め・手草(たくさ)・四方剣の3段をご覧いただきます。いずれも場を清めて神様をお迎えするというものですね。ぜひ1つひとつの所作に注目して楽しんでいただけたら、と思います」

三島さん、ありがとうございました!お話をお聞きしている間にも、着々と公演に向けて会場設営や舞手の準備が進んでいきます。





公演を一目観ようと人が集まってきました。本公演は満席でした!

日も落ち始め明るい時間に目にした時とはガラリと印象の違う、日御碕神社の夜の姿が現れます。



拝殿に向かう道なりに灯篭が灯り、幻想的な雰囲気に包まれ神楽が始まります。

1つ目の演目「塩清め」は、神楽に先立ち四方八方神楽に関わる場や人を清め神様をお迎えする舞いです。白地に金刺繍の衣装が光に照らされ神秘的です。

2つ目の演目は、真榊を奉り、四方の神様に捧げる舞い「手草(たくさ)」。ゆったりとした奏楽に合わせ優雅に力強く舞います。

そして最後の演目は4人の舞手が御弊と鈴、剣を手に舞い、この場を祓い清め邪悪なものを断ち切る「四方剣」。4人で揃った丁寧な所作が印象的でした。

神聖な空気の中で舞われる出雲神楽。悪いものが祓い清められ、いいご縁と巡り会えますように!

DATA

日御碕神社
TEL0853-54-5261

島根県出雲市大社町日御碕455

13.絶景に心が洗われる「日が沈む聖地出雲の夕日」

2017年に日本遺産に認定された「日が沈む聖地出雲」。島根半島西端の海岸線には、出雲神話の舞台となった「稲佐の浜」と「日御碕」があります。日本海に沈む美しい夕日は思わず息をのむほど。そんな絶景夕日ポイントをご紹介いたします!

出雲神楽の公演前に日御碕神社から海沿いを約15分歩くと、絶景夕日スポットの1つである「出雲日御碕灯台」があります。

東洋一の高さを誇る日御碕灯台は、 平成10年に「世界の歴史的灯台百選」の1つに選ばれ、平成25年には国の登録文化財となった貴重な建築物です。明治36年に設置され、100歳を越えた今なお現役で海の安全を守っています。ココから海の方へカメラを向けてみると…。

夕日に染まる空はオレンジや水色、赤やピンクなどとっても表情豊か!一瞬一瞬で次々表情が変わり、まるで天然のカラーセラピーのようです。船が走っている様子も絵になりますね。

惜しくも太陽が水平線に沈む瞬間には間に合わなかったのですが、水色とピンクが優しく混ざり合う空色がすごく綺麗で、白亜の灯台が一際映えました。

DATA

出雲日御碕灯台
TEL0853-54-5341

島根県出雲市大社町日御碕1478

・営業時間 9:00~16:30

稲佐の浜の夕日

神在月に全国から来る八百万の神様を迎える「稲佐の浜」。 どこまでも広く高い空と海のコントラストと、静かに佇む弁天島に沈みゆく太陽が描く夕景に思わずため息が漏れてしまいます。波の音や香りとともに楽しんでみてはいかがでしょうか。

海岸線沿いに見る夕日

海岸線沿いに車を走らせているだけでこの開放感ある夕日が撮影できます…。眺めているだけで、心がスーッと軽くなるかのよう…。さらに市内では、海岸沿いに車を止めて夕日を眺めることができるスペースもあってびっくり!実際に車を止めて外へ視線を投げている方々がいらっしゃいました。
はぁ〜夕焼けが綺麗ですね…。雲の流れや形1つでも趣がガラッと変わって、まるで絵画のようです。

夕日情報は「夕日指数」でチェック!

様々な気象条件や地形特性を考慮し、夕日が見える時間帯の雲の量や夕日そのものが見える時間数から日本海に映える夕日の度合いを指数にして表した「夕日指数」なるものを、下記のURLより確認することもできます!お出かけの際、是非参考にしてみてくださいね。

▼「夕日指数」はココからチェックできます!
出雲観光協会HP http://www.izumo-kankou.gr.jp/sunset/4849

▶︎ 次回【5th day】お出かけ前に要チェック「2020年2月〜のイベント情報」をメインに、わがままを叶えた島根県 出雲・松江市の旅「体験してみたまとめ」をご紹介します!

DATA

夕日スポット情報

・しまね観光ナビHP https://www.kankou-shimane.com/mag/5089.html
・出雲観光協会HP http://www.izumo-kankou.gr.jp/sunset/4849

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