「ほしい!」を見つける ずっと愛せる東北。vol.1-2

【2nd day】震災を経てなお変わらないもの
【再生にかける願い600年の歴史を繋ぐ、雄勝硯復活への軌跡

2011年の東日本大震災による地震と大津波によって硯産地として甚大な被害を受けた石巻市雄勝町。震災から間もなく丸9年が経とうとしている今も、道路や建物の復旧工事が続いています。震災によって職人や工場・雄勝硯伝統産業会館、収蔵品のほとんどは流され、日本の硯の90%を生産していた硯用の石も摂れなくなり、雄勝町から供給していた石も震災以降対応ができていないといいます。

雄勝硯や石皿をはじめとする雄勝石工芸品の販売も行う雄勝硯生産販売協同組合内では、震災後の様子がパネルからも感じることができます。「震災後は全国から約7,000名のボランティアの方々のお力もお借りし、約3,000面にのぼる硯や石皿、食器類などの工芸品の素材となる原石10,000枚以上を回収しました。皆さんに流失した原材料・硯・石工芸品の回収作業のご支援をいただきました」と雄勝硯生産販売協同組合 事務局長の千葉さん。

雄勝硯600年の歴史を繋ぐため、2014年には念願であった仮設工房を立ち上げ、産地の復旧・復興を目標に活動をスタートしました。現在は震災後、石巻市以外に暮らす職人たちもこの工房に通い製品作りを行なっています。

そして、被災した「雄勝硯伝統産業会館」も新しく生まれ変わり2020年4月のオープンを目指し着々と完成に近付いています!

外観の壁には、地元住民やボランティアで全国から訪れた人々の手によって集められた、震災によって流された雄勝石のスレート材が使用されています。艶やかに1枚1枚が存在感を放つ様子は、まるで大海原を力強く泳ぐ魚の美しい鱗のようです。

雨や雪で水分をまとえば黒みを帯び、太陽が照る天気であれば薄く上品なグレーの色味に変化する雄勝石のスレート。震災を経た雄勝町と雄勝硯・石の歴史と文化を未来へ繋ぐ、象徴的存在です。また、同じ建物の並びには「おがつ海産物直売所」もできるそうです!どんな施設になるのか完成が待ち遠しいですね。

体験を通じて直に触れる雄勝石の魅力MY SUZURI運動

震災後も受け継がれてゆく雄勝硯・石の歴史と技。雄勝石の魅力や硯がどういうものか、墨を磨ることとはどういうことなのかを体験する「MY SUZURI」運動が2015年にスタートしました。彫刻家・画家の武藤順九氏と共に“石の文化”を体験するこの運動は、硯を自分でデザインし彫刻刀で彫り自分だけの硯を作る、というものです。

取材にお伺いした際に、これからMY SUZURIの持ち主の元へ届けられる直前のオリジナルの硯たちを見せていただきました。この運動がスタートしてから今までに、県内各小学校や寺院の他、東京や愛知県など県外でも活動を行なってきたそうです。「思いおもいの形に仕上がった硯たちは、最後に職人たちが仕上げを行います。小学生の枠にとらわれないアイディアに、私たちも一緒に楽しむことができました」と千葉さん。雄勝硯に近い距離で触れることで、また一歩身近な存在になれば、との願いが込められています。

▶︎ 次回【3rd day】では雄勝硯職人・樋口さんの想い、雄勝硯の制作過程、制作のこだわりをお届けします。

雄勝硯生産販売協同組合
Tel.0225-57-2632

宮城県石巻市雄勝町上雄勝2丁目25●営業時間/9:00〜17:00

●定休日/毎週火曜

●ホームページ/http://ogatsu-suzuri.jp

●ネットショップ/https://ogatsusuzuri.thebase.in

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